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【古道具屋皆塵堂シリーズ 猫除け】人間の怖さとやさしさがあふれる 怪談時代劇

今回は「輪渡颯」さんの時代小説『古道具屋皆塵堂』シリーズの2作目『猫除け』を読書いたしました。

 

この小説は、いわくつきばかりが集まる古道具屋皆塵堂にやって来る、因縁のある物が起こす怪異や事件に巻き込まれて行く人々の物語で、登場する市井の人々の気持ちのいい性格や人情味が光ります。

 

このシリーズでは巻ごとに主人公が変わり、様々な事情で皆塵堂で働く事になる主人公の一冊通しての成長の物語を描いていきますが、今回の主人公は皆塵堂で丑の刻参りの道具一式を手に入れた庄三朗が主人公です。

 

叔父に騙されて、何もかもうしなったその恨みを晴らすべく丑の刻参りを行おうとする庄三朗ですが、そこにやってきた飄々とした皆塵堂の店主にさそわれて、住み込みで働くことになります。

 

店主が格安で搔き集めてくる品にまつわる様々な怪異が起こり、一作目で主人公を務めた幽霊が見える若旦那太一郎や、猫好きの気っぷのいい魚売り巳之助などの人々の助けを借りて解決されていきます。

 

その様々な事件を経て、シリーズの中でも心根の優しい庄三朗が恨みや悲しみから立ち直る姿にも注目です。

 

怪異の背景には、凄惨な事件だけではなく、嫉みや欲だったりした鬱屈した心が引き起こすものもあり、現代にも続く人の闇とそれに対する人々の真っ直ぐな心、悪徳に怒り悲劇に悲しむ姿が光ります。

 

読みやすい文章の小説なので、普段は時代小説を読まない方も一度読んでみてはいかがでしょうか。