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【仮面舞踏会 伊集院大介の帰還】ネット上にある顔の見えない恐怖

今回私がご紹介する本は「栗本薫」さんの推理小説の傑作、『仮面舞踏会 伊集院大介の帰還』です。

この物語は、インターネットがの黎明期とも言える時代での事件を描いたものですが、今この時代と照らし合わせてもおかしくないような小説となっておりますので、今の方々にも楽しんでいただける仕上がりであると言えます。

この小説は作者の人気シリーズ伊集院大介シリーズの中の一つであり、前作で一つの区切りがあって、言わば第二期の始まりにあたる作品であります。

過去の事件では被害者家族として登場した少年だった稔が成長してワトソン役となり、彼の視点で物語は進んで行きます。

物語はパソコンネットで性別を偽り、姫のハンドルネームでちやほやされるのを楽しんでいた稔の友人が泣きついてくるところから始まります。

オフ会の身代わりを頼んだ女性が通り魔に襲われ、狙われたのはネット上の姫かもしれないと訴える友人のために調べ始めた稔は、やがて行方が分からなくなっていた伊集院大介と再会することとなり、彼の協力を受けて真相へとたどり着くことになります。

伊集院大介シリーズでは精緻なトリックや派手なアクションは少ないですが、人の心の奥底にある悪意にスポットを当てたホラーテイストのあるサイコサスペンスがメインで、静かにじわじわと進んで行くところが魅力です。

冬の寒さにマッチする静かで凍えるサスペンス。この機会に一度試してみてはいかがでしょうか。